研ぎ屋現る
「ハサミに包丁。何でも研ぎます。今すぐ研ぎます。
決してお手間は取らせません。この場で研ぎます。御用はいかが。」
話に聞いていた、行商の研ぎ屋さんが店先にて突然、口上を述べました。

咄嗟に「えーと・・・。今、間に合っております!」と言うと
ニッコリ笑顔で、ペコリとお辞儀をして
スッと出て行かれました。

仕事中の鶴谷の伯父は、常に時間を惜しんでいるように見えました。
仕事以外の電話や、親戚の訪問すら
手を休める理由にはしたくない、といった風でした。
そこへ行商に来る研ぎ屋も、同じ職人です。
プロ同士の緊張感と、阿吽のやりとりがあったことでしょう。
先の口上ひとつとっても、今時のセールスとは違い、
相手の邪魔をしない工夫を感じます。
いいものを聞かせていただきました。

昔の話を聞く、滅多に無いチャンスだったのかもしれません。
「ちょっと待って・・・」と通りに出ましたが
もう姿が見当たりませんでした。去り方も見事です。

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この僅かな時間の出来事を、後からあれこれと後悔しています。
研いでもらう鋏を準備し、再訪を願っています。
(写真は店内壁面に下げられて数十年の木製ハサミです。)

もうすぐお盆です。
鶴谷家3代の職人も、近くに来ているのでしょうか・・・