ラピュタ阿佐ヶ谷 Part2
利夫がいつものように街を歩いていると、
濃いピンク色の大きなポスターが目に飛び込んできた。
淡路恵子が、煙草を手に振り向いている。
「煙草が似合うなぁ。そうか、ラピュタ阿佐ヶ谷か。
久し振りだから、午前中から行って2本観るとするか。」

午前中に、勝新太郎、田村高廣の「兵隊やくざ」、
阿佐ヶ谷パールセンター商店街で昼食を済ませ、
午後には東宝の青春物、吉沢京子、内藤洋子の
「バツグン女子高校生 16才は感じちゃう」。
午前中の緊張感と午後の初々しさ。
2本の対比に酔った。

とは言え利夫の場合、単純に、後から観た方が
記憶に残り後を引くのも、無理はあるまい。
としドンは第二の青春真っ只中!!

年が明けたら、今度は神保町シアターで、
日活特集である。

正麺騒ぎ
利夫は、学生時代の友人と、神保町で再会した。
彼の欧州での暮らしも、十数年を数える。
今年も、手土産の赤ワインや、大西洋の珍味を肴に
様々な情報交換が楽しい。

わずかな日本滞在中に、パスタ以外の麺類を堪能する彼に、
逆に教わった情報があった。

「マルちゃん正麺」大ヒット!

タクシーの運転手からの情報らしい。
サッポロ一番、出前一丁、80年代には中華三昧など、
インスタントラーメンに慣れ親しんだつもりの
としドンであったが、それは知らなかった。

「夜食に食おう!」と
とことん学生時代のノリで深夜のスーパーに赴いたが、
正麺のみ、売り切れていた。
「これは空前の大ヒットだ!うまいに違いない!!」
としドンの妄想は膨らんだ…。

翌日、正麺を手に笑みを浮かべる友人。
「富士屋にあった。」
また、彼のラーメン好きを知る別の友人手土産も、
正麺だった。
昨夜とは一転、たくさんの正麺に囲まれて、
幸せそうな友人ととしドン。

商品ヒットのメカニズムを垣間見た、
正麺騒ぎであった。


くりくり展♯8
神保町散歩をしながら利夫は思う。
近頃どこへ行っても、女性の方が多い。
女性の方が楽しんでいるように見える。
世の男は何処か遠くへ行ってしまったのか、家に篭っているのか、
それともワタシの出掛け先が、乙女チックなのかしら…。
殿方代表、いやせめて白組男性軍トップバッター位
ではありたいと、常日頃思っているのだが…。

そんな利夫の足は、靖国通りから細い道へ。
日曜日の、気まま静かな路地裏歩き
カフェフルークの向かいに、小さな看板を見つけた。
神保町SPIN GALLERYで、AMULETアミュレットが主催している
「くりくり展♯8」である。
細い階段を上ると、小さくて可愛い手作り雑貨の数々が
としドンを出迎えてくれた。

初めは、虫眼鏡が無いと良く見えんな…と
腰が引けていたが、鑑賞していくうちに
小さな世界にどんどん引き込まれた。
息を止め、恐る恐る、震える手で
思わずつまんでみたりも、した。

冒頭の疑問などすっかり忘れ、
満足して階段を下りた。

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「美術+雑貨×古本 ≒ リトルエキスポ2012」に参加します。
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ラピュタ阿佐ヶ谷
ラピュタ阿佐ヶ谷は、
古き良き日本映画を上映する映画館の一つだ。

黒沢、成瀬、小津、といった監督作品はもちろん
原節子、高峰秀子、淡島千景、岸恵子、吉永小百合、
若尾文子、岡田茉莉子、香川京子、山本富士子、
久我美子、浅丘ルリ子、八千草薫・・・
といった錚々たる女優や
岸田森、佐藤慶、天本英世、伊藤雄之助、西村晃・・・
といったニヤリとさせられる俳優の特集など
いつも「観た〜い!!」
と、としドンは思うのだ。

真夏の午後、JR阿佐ヶ谷駅の商店街をひやかしつつ
いざ!ラピュタへ・・・

1964年公開の映画『続 若い季節』。
スパーク娘が谷啓が植木等が古今亭志ん朝が
ハッスルしていた。

「昭和39年かぁ〜」
80分後、利夫は笑顔で立ち上がった。
ラピュタ阿佐ヶ谷の座席は
腰痛の身体にもやさしい。

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ザ・ビーチ・ボーイズ FOREVER
「チケットまだ買えるぞ。」
学生時代の友人からの知らせが、
「球場のコンサートはどうもな…」
と腰が引けていた利夫の背中を押した。

どうせ幕張まで行くならと、少し早く出発して
幕張の浜辺に出た。予想外に人が少ない。
霞んで見える海ホタル、波打ち際で戯れる親子、
横切っていくカモメを見ながら潮風に吹かれると、
街中の暑さが嘘のようだ。

どうしてファンになったのか、
それも思い出せないくらい時間が経っている。
ただアメリカ的なものに憧れただけだったのかもしれない、
などと考えている内に、コンサートが始まった。
利夫は、球場のコンサートを敬遠していた事を後悔した。

心地よい風、暮れていく空、
そこに溶けていく50年来のハーモニー。
飛び立っていく飛行機が、滲んで見えた。
もう細かい事はどうでも良い。
Do It Agein.
まだ何度でもやって欲しい。
Thank You,THE BEACH BOYS.


イチロー
女優の山田五十鈴が9日に亡くなった。
主演作『樋口一葉』(昭和14年)を観に神保町シアターに行き、
すずらん通りの樋口一葉・居住地跡でもひやかすか…

と予定していた利夫だが、
結局、外出どころではなくなった。
朝からどっぷりとテレビに張り付いていた。

シアトルマリナーズのイチロー選手が、NYヤンキースに移籍。
記者会見後に31番の背番号で8番ライトの先発出場だ。

Åロッドへは未だにブーイングのシアトルファンは、
イチローには総立ち拍手と暖かく、
としドンの感動を深めた。

日本のカワイイ展
温泉が好きな利夫は、
水月ホテル鴎外荘の鴎外温泉に、ついでを作っては足を向ける。
そこにあったチラシを手に、昨日は、
弥生美術館の『日本のKawaii(カワイイ)展』に出掛けた。
展覧会のテーマは
「大正100年記念 ファンシーグッズは大正時代から始まった」。
利夫には、昭和元年生まれを筆頭に四人の姉がいる為か
展示物には数々の懐かしい物が見られた。

女性が「かわいい」の形容詞を連呼する様になったのは
いつからだろうか…。
何に関しても、表現が「かわいい」だけとは如何な物だろうか…。
と、オヤジとしては考えてしまうわけだが
竹下夢二、高畠華宵、佐藤漾子、松本かつぢなどの
画力ある作家たちの原画には
思わず惹き付けられた。

中原淳一は神保町にもゆかりがあり、馴染み深い。
内藤ルネ、水森亜土、田村セツコ、わたなべまさこ…
としドンは、不覚にもつぶやいていた。
「かわいい♥、な…。」


シェ・モワ
神田神保町のすずらん通り。
利夫の足は、餃子専門店『スヰートポーヅ』へ。
(姉達は未だに『満州屋』と呼んでいる。)

注文し、ぼんやり待ちながら、いつもの空想に遊ぶ。
この店の2軒となりが、実家だったのだ。
父母や姉達、家族で囲んでいたテーブルは、
わずか数メートル先の位置だったのではなかろうか?

にわかタイムスリップも、
ビールと塩豆、
午後から楽しめる水餃子が運ばれてきたら
もう、どうでも良くなってしまうのだった。

約60年の変わらない味に満足して、
東京堂ふくろう店へ足を向けた。
入り口正面奥の、東京関連の書棚をいつも覗くのだ…

・・・
コレマタほんの数十メートルの移動だったはず。
でも、まるで時間も場所も、
はるか遠くまで来てしまった。
そんな錯覚に、としドンは眩暈した。

そこにあるはずの、利夫の知る東京堂ふくろう店は
数日前に、日本初の女性向け書店にリニューアルしていた。
店内すべてが、女性のための乙女空間へと様変わりしていたのだ。
バッグやアクセサリー等の雑貨もあり、
店は、多くの女性客で賑わっていた。

店名は『シェ・モワ』(わたしのおうち)だそうだ。
さっきの、空想の中の我が家は、差し詰め
(としドンのおうち、か)

利夫は、近い内に姉達を『シェ・モワ』に連れて来たいと思った。
すずらん通り生まれの、かつての乙女達を。


神保町と野球
3月28日、29日はメジャーリーグ開幕戦が東京ドームであった。
利夫は両日観戦を楽しんだ。
松翁で蕎麦を食べ、球場へ。神保町からは徒歩10数分と近い。

彼が子供の頃は、
父親と自転車で後楽園スタヂアムに行った。
夕暮れに、ナイター照明へ変わる時の空が印象的だった。
そんな当時の球場の雰囲気が好きな彼は、
いつの間にか大リーグのテレビ中継を楽しむようになったのだ。

シアトル対オークランド戦に
としドンは少年のように興奮した。

フォークの神様・杉下茂、守備の神様・高林恒夫ともども
神保町の出身だ。
利夫や姉達にとって、杉下は「おまけやのお兄ちゃん」。
近所にあった杉下の実家は、『おまけや』という駄菓子屋だった。
三和土に巨大な靴があったよねー
と姉弟で懐かしく思い出したりする。

又、神保町は日本野球発祥の地でもあるそうで、
学士会館にその碑もある。


神保町で回転寿司
利夫はここのところ、昼めしに
江戸前回転寿司『もり一』神保町店へ良く行く。

いつでも常連客で賑わってるし、
明るい雰囲気が楽しい。

微かに聴こえる布施明や由紀さおりの楽曲も
通いたくなる理由の一つかもしれない。
としドンは、Jポップが苦手だ。

腹がくちくなり、本日も満足。

もうすぐ、春だな。
白山通りの風に、そう利夫は感じた。